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Copyright Maeda Yutaka

1.1 光速度不変の原理

   光の速度は約30万km/秒です。さらに光は電磁波の一種であり、いわゆる電波と同じものでした。マックスウェルは、ファラデーによって発見された電磁気に関する諸法則を、数学的に整理し、電磁気学を完成させました。そしてその中で電磁波の存在と、その速度を30万km/秒と予測しました。光の実測速度30万km/秒と電磁波の理論予測30万km/秒の一致により、光は電磁波の一種であり、単に周波数の高いものが光、低いものが電波と理解されるようになったのでした。

  ところでこれに対し、早い光とか遅い光とかは在るのでしょうか? 『xx天問台、世界最高速の光を発見。なんと、33万km/秒。3年ぶりに記録を更新!』 想像すると面白ことですが、このようなニュースはついぞ聞きません。秒速50mで走っている自動車のヘッドライトから出る光は、止まっている自動車のヘッドライトから出る光より50m/秒だけ早くてもいいような気がします。はたして、現実はどうでしょうか。

 宇宙には色々な方向に星が動いているので、先ほどの様なニュースが実際に有って不思議ではありません。ところが、現実は違っていて、光の速度はどの様な場合も30万km/秒でした。

 このことは科学者によってさまざまな方法で確認されてきました。例えば高速で回転し合っている連星を例に取ってみましょう。連星は星同士が重なって食が起きる場合、明るさが変化します。一回転する途中では向かって来るタイミングと去っていくタイミングが当然できます。向かって来るときに発せられた光が加速されていたら、何十万光年も隔てて地球にたどり着くころには、加速されていないタイミングでの光より当然早く着きます。仮に速度差が光速の一万分の一程度、30km/秒だったとしても数十年の差がついてしまうでしょう。逆に、去っていくタイミングでの光は同様に遅く着くこになります。

-30km/s

+30km/s

  そうなるとその星の明るさはは色々なタイミングので発せられた光が重なり合って複雑な変化を見せることになるはずです。ところが実際に観測される連星の変化は、光が加速されないことを想定した場合の単純なものでしかありませんでした。

 水面上の波は発した物体の速度に関係無く一定の速度で広がって行きます。やはり光はこのようにな伝わり方をするのでしょうか。


 『星からの光も宇宙の海を波の様に伝わって来るのだろう。きっと光を伝える水のような媒体が宇宙を満たしているのだ』 19世紀の物理学者たちはこの媒体をエーテルと呼び『地球は宇宙に満ちたエーテルの海の中を走り回っているのだ。さすれば地球上ではエーテルの風が吹いていることになる。だとしたら測る向きによって光の速度が異なってくるはずだ』と考えました。



 しかし結果はエーテルの風など吹いていませんでした。マイケルソン、モリーによる実験が有名です。精巧な光の干渉計を用いて、90度異なる向きの光の速度差を測れるものでした。何度も場所を変え、季節を変えて実験は繰り返えされたが結果はいつも同じ『速度差は無い』でした。光の速度はいつでも、どこでも、だれにでも30万km/秒であったのでした。

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