前のページ インデックス 次のページ
Copyright Maeda Yutaka
2.3.9 アインシュタイン・テンソル
   
アインシュタイン・テンソル

 よし、手始めにコンピュータ実験での手順を、もう一度数式を使って整理してみよう。

    ビアンキ恒等式
  
    ↓縮約
  
    ↓縮約
  

という手順だった。
と言う事は、

  

と言う事だ。 ところで、gの共変微分は通常の微分

   

での定数C並だ。 つまり、関数の積のの微分のような、めんどくさい微分をする必要なく、と書ける。つまり左辺はgを分配し

  

と書ける。
左辺第1項の_部分に注目し、ビアンキの関係式

        , 

を使い変形すると

  

となる。
よって、恒等式は

  

となる。 
第3項にh,iの反対称性を適用し、

  

第2項、第3項のhを縮約すると

  

後はgの添字を縮約し、

  

となる。
ここで、第2項のダミー添字jを第1項のhに統一し1項、2項を足し合わせ

  

得ることが出来る。
さらにlを両辺に掛けて、

  
    ↓
  
    ↓
  

と、微分用のダミーインデックスをhに統一できる。
共変微分の添字をカッコの外にくくりだし、両辺に1/2を乗ずれば

     尚、

となる。


 そう、このカッコの中が非常に重要だ。 ビアンキの関係式を適用しながら、ビアンキの恒等式を縮約た結果の、全エキスがこの中に詰まっているはずだからだ。


お! いかん、いかん。 ずうっと、添字にローマ字を使い続けていた。 ギリシャ文字に戻そう。
 カッコの中のテンソル式様にお名前をお付けししなければ。 そうだな、テンソル名は神々しいから、Gにしよう。

   ( あるいは、  )

犬言訳者注:以下、意味不明の神がかりな文章が続く。可能な限り犬言に忠実に翻訳を試みたが、物理学として数式以外は参考にしないことをお奨めする

どうだ、これが神々しき、宇宙の真理テンソル様のお姿だ! そして、その為せる技は、共変微分した式

               

で在らせられる。

宇宙の真理テンソル様の為せる技は、天上界ではビアンキの恒等式と呼ばれ、そして我々の地上界に降臨されし時には、この様な技を為されるのである。

  


 へ? 何々、 ちゃんと最後まで教科書読んだのかだって? ええっ! なに、何とこれが『アインシュタインのテンソル』のことだって?!・・・ 



・・・ふん! 人に、じゃなくて、犬に散々めんどくさい実験やら、解説させといて、黙って見ていたくせに。 ぷんぷん! もう実験なんかやってやらない!

  ・・・

 え? 3時のお茶に、取って置きのドーナッツを用意してくれるって? だから機嫌を直して、実験を進めてくれだって・・・。 ほ、ほんとかい? 

も、勿論! すぐ機嫌なんて取り戻せるぞ!

   ほら!
   このシッポを見てみろ。 
            
             ほら! ほら!
             さあ、次の実験何だっけ?

何、何、 RμνとRについての挙動確認? お安い御用!


リッチ・テンソル

Rμνはリッチ・テンソル(Ricci tensor)と呼ばれている・・・と、教科書に書いてあった・・・。 早速、R4を縮約しよう。 対称性の無い添字どうしのhとkに付いてだ。

(* Ricci tensor *)
R2=Table[
    Sum[R4[[h,i,j,h]],{h,M}],{i,M},{j,M}
   ] //ExpandAll//Simplify

ほい!

  

ふむ。対称性が有りそうだな。

Table[
R2[[i,j]]-R2[[j,i]],{i,M},{j,M}
] //ExpandAll//Simplify


いつもの様に、対称性の確認。

       
OK!

大サービスで添字を入れ替えるテクニック。

  Transpose[変数,{入れ替え位置指定}]

R2==Transpose[R2,{2,1}]


       

と簡単に確認できる.
ビアンキの恒等式の巡回置換で使えたかな?



スカラー曲率

Rはスカラー曲率と呼ばれている。
やはりIgxxにより、縮約。

(* Scalar curvature *)
R=Sum[
Igxx[[i,j]]R2[[i,j]],{i,M},{j,M}
] //ExpandAll//Simplify



       

ふむ。 これはちょっと興味があるな。
トーラスのガウス曲率は場所によって+/-した。 リングの内側側面が(-)で、外側側面が+。 そして天と地の部分が曲率0だった。
このスカラー曲率Rはどのような分布なのかな? グラフに書いてみよう。

x1がパイプの径方向の座標軸だ。
天が0 、外の赤道がπ/2、地がπ、内の赤道が3π/2
となるように座標を取ってある。

(* Graphic of the R *)
a=ga; b=gb;
Plot3D[R,{x1,0,2Pi},{x2,0,2Pi},
AxesLabel->{x1,x2,"R"},
PlotPoints->20]
Clear[a,b]

       

なるほど、ガウス曲率Kとは符号が逆だな。内側(3π/2付近)が狭くなっているから曲率は大きい。 x2方向には曲率の変化は無い。

さあ、私が発見したと思っていた宇宙の真理テンソル様。じつはアインシュタインテンソルだったが。 これが、共変微分で0となるのを、直接確認してみよう。

Gは2階のテンソルなので、テンソルの共変微分のルールを適用して
(*Einstein tensor *)
G=R2-gxx*R/2 //ExpandAll//Simplify

cdG=Table[Sum[D[G[[h,i]],x[[h]]]+
Chr2[[h,l,h]]G[[l,i]]-
Chr2[[l,i,h]]G[[h,l]],
{h,M},{l,M}],
{i,M}] //ExpandAll//Simplify


       

・・・。

 そういえば、球面での実験は途中でやめちゃったんだっけ。
よし、大サービスで球面のリッチテンソルとスカラー曲率Rも計算しておこう。

リッチ・テンソルはOut[126]。 そして・・・はらほら、Out[129]にある通り、Rは全然変化しない。グラフでもまっ平ら。 これが『球面はつまらない空間だ』の原因だったのかな。

       

       

ちなみに、球面のガウス曲率K(=1/a2と)は逆符号で2倍、

   G=-2K

となっているな。

  さあ、終わったぞ。 早くお茶にしょう。  ほれ。ほれ!
                
           さあ、ドーナッツ! 早く。 早く。 ほれ。ほれ!




 あれ? アインシュタイン・テンソルがゼロであることを、メイは気にかけようとしないですね。 きっとドーナッツのことで、頭の中が一杯なんでしょう。

 しょうがないので、お茶にでもしますか。
前のページ インデックス 次のページ